○タンパク質膜透過
さて、大腸菌の外膜とペリプラズムに局在するタンパク質は、細胞質で合成された後、内膜を透過しなければなりません。そのため、これらのタンパク質は、上述の分泌タンパク質同様、N末端にシグナルペプチド(リーダーペプチド)をもった前駆体タンパク質として合成されます。大腸菌では通常外膜を超えてタンパク質が放出されることはありませんが、その構造的類似性から、ペリプラズムタンパク質も外膜タンパク質も「分泌タンパク質」と定義されています。動物由来の分泌タンパク質は大腸菌の内膜を透過しますし、バクテリア由来の分泌タンパク質が小胞体膜を透過したりして、タンパク質膜透過機構はどんな生物でもよく似たしくみで進行すると考えら れてきました。実際、SecYEGとSec61はよく似ていてどちらも分泌タンパク質が透過していく「ポア」になりますし、SRP、SRはどんな生物にも存在します。
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しかし、全く同じ機構でタンパク質膜透過が起こるかどうかというと、実はかなり違います。その大きな違いは、小胞体膜透過はタンパク質合成に共役して進行する(co-translational)のに対して、大腸菌ではタンパク質合成が大部分終了してから(post-translational)膜透過する点です。そのため、大腸菌ではSRPはタンパク質膜透過には関わらないわけです。SRPは「シグナル認識粒子」だったはずで、大腸菌ではSRPはシグナルペプチドを認識しないというのはとても紛らわしいですが、SRPには実はもっと重要な仕事があります。それは、タンパク質膜透過ではなく、タンパク質膜挿入です。
○タンパク質膜挿入
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膜タンパク質は膜に局在するタンパク質ですが、その中でも「膜内在性タンパク質」は膜を貫通する領域をもっています。この領域はとても疎水的(あぶらっこい)ので、水には溶けません。この疎水的な領域が合成されると、速やかに手当てしないと凝集体ができてしまいます。そのため、膜タンパク質は合成されると同時に膜に挿入されます。膜タンパク質が合成され始め、疎水的な膜貫通領域がリボソームから出てくるとそこにSRPが結合します。SRPが結合した合成途中の膜タンパク質は膜上のSRP受容体(SR)に輸送されます。その後、膜透過にも必要なSecYEG上で膜挿入が進行します。YidCは膜挿入途中のタンパク質と相� �作用し、おそらく膜タンパク質が膜内で高次構造を形成するのに必要です。図3の上段は、動植物の小胞体膜への膜挿入に驚くほどよく似ていることがおわかりいただけると思います。
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これだけで全てが説明できれば非常にすっきりとするのですが、実際にはもう少しバリエーションがあります。もし、膜タンパク質が図3中段のように親水的な領域をペリプラズム側にもっていれば、SecAという因子がさらに必要です。SecAはタンパク質膜透過に必要な因子でATPase活性を持っています。親水的な領域は、分泌タンパク質の膜透過と同様にSecAにより膜透過されます。しかし、この場合も途中までは上段と同じです。
さらにややこしいのは、下段の「Sec非依存」の経路の存在です。この経路ではSecだけでなくSRPも不要です。なぜかというと、この経路の膜タンパク質は分子量が小さいものが多く、SRPが膜貫通領域に相互作用しようとしたときにはすでにタンパク質合成が終了してしまっているからです。SRPは合成途中のタンパク質にしか結合できないのです。さらに、この経路の膜タンパク質は、リン脂質だけでできたリポソーム(人工的な膜小胞)に膜挿入することが知られています。したがって、Sec非依存の膜タンパク質は、膜脂質と膜タンパク質の疎水性相互作用のみによって「自発的に膜挿入」すると考えられてきました。
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